【素材の基礎知識】銅加工製品が環境にやさしい理由
私たちの生活と深くかかわっている「銅」。加工しやすい、加工しても強度が落ちない、耐久性が高い、導電率や熱伝導率が高いなど、さまざまな優れた性質をもつ素材として知られていることはこれまでにご紹介してきました。今回は、そんな銅が環境にやさしいと言われる理由についてご説明します。
銅はリサイクル(再加工)しやすい
銅はスクラップ価値が高い金属です。有価金属として積極的に回収・資源化されるため、処分に余計なコストがかかりません。部品加工の際に発生する銅クズのほぼすべてが、伸銅メーカーなどで原料として再利用されており、電線などの原料になることもあります。廃電線も伸銅品の原料になりますが、特に純良な銅素材は電線の原料としてリサイクルされ、メッキがあるものは主に鋳物メーカーなどで再利用されています。
銅管は製造・施工時のCO2排出量が少ない
腐食しにくいという特徴から給水・給湯用配管には銅管が使われることがありますが、銅管は樹脂管やステンレス鋼管などと比較すると、製造から施工までの間に排出するCO2(二酸化炭素)の量が少ないという長所があります。以下は、代表的な配管材のCO2排出量を比較した表です。
管種 | CO2原単位 [kg-C/kg] |
単位長さ当りの
重量[kg/m](20A)
|
単位長さ当りの
CO2排出量[kg-C/m]
|
---|---|---|---|
配管用炭素鋼鋼管 | 0.89 | 1.68 | 1.50 |
硬質塩化ビニルライニング鋼管 | 0.61 | 1.82 | 1.11 |
ステンレス鋼管 | 1.62 | 0.529 | 0.86 |
銅管(Mタイプ) | 1.30 | 0.487 | 0.63 |
地球温暖化がますます進む昨今、二酸化炭素の排出量が少ないというのは、銅管を選択する大きなメリットと言えるでしょう。
銅管は環境ホルモンとも無縁
平成12年、プラスチック製の水道管から環境ホルモンが検出されたというニュースが世間を騒がせました。また、厚生労働省も多くの樹脂管から環境ホルモンの疑いのある物質(ビスフェノールAなど)が溶出されることを調査研究の中で報告しています。一方、銅管からは環境ホルモンが検出されていません。安全性が極めて高く、環境にも人にもやさしい素材と言えます。
緑青は有毒?
銅が酸化することで生成される青緑色の錆(さび)は「緑青(ろくしょう)」と呼ばれます。この緑青には、銅板の表面に皮膜をつくることで内部の腐食を防ぐ効果があるほか、抗菌作用も備えています。美しい色をもつため、銅合金の着色にもよく用いられています。
「銅の経年変化を解説します」の回に詳しくご説明しましたが、かつて教科書などに「害がある」と誤った記載があったことから、「緑青=有毒」と誤解している人がいます。しかし緑青に毒性はなく、人体にとって無害に等しい物質だと長年の研究によってすでに証明されており、昭和59年には厚生省(当時)も正式に発表しています。