【JIS規格から見る銅合金の選定ガイド】用途別特性と品質管理のポイント
銅合金はその種類によって「高導電性」、「耐摩耗性」、「高熱伝導性」などの異なる特性を持っています。その特性こそ銅合金が幅広い産業分野で使用されている理由です。
ここでは、JIS規格にもとづいた最適な材料選定と品質管理を行うためのポイントを、銅加工のプロの目線で説明します。特性を生かした銅加工のための参考にしてください。
銅合金のJIS規格とは?
日本の国家規格で、産業製品に関する規格や測定法などが定められたものです。生産の効率化や環境保全、技術進歩の促進などの観点から規格を制定・統一することが目的で、銅合金にもJIS規格が定められています。
銅の合金番号はCと4桁の数字で表され、C1000番台は純銅系、C2000~4000番台は黄銅系、C5000番台は青銅系、C6000番台はアルミニウム青銅系、C7000番台は白銅・洋白系です。
用途別の最適材料
電気・電子部品用途
導電性を重視する場合
導電性を重視する用途として挙げられるのがパワー半導体の放熱基盤や大電流用ブスパーなどでしょう。これらには熱伝導性に優れ、導電率が99%以上のC1020(無酸素銅)、C1100(タフピッチ銅)が最適です。純度が高く、不純物による特性劣化が少ないというメリットもあります。
強度と導電性のバランスを重視する場合
コネクタ端子やスイッチング部品は強度と導電性の両方をバランスよく備えている必要があります。そのため、これらの製造にはC1940(鉄入り銅)、C5210(りん青銅)が最適です。耐応力緩和性が良好なうえ、疲労特性にも優れています。
機械部品用途
耐摩耗性を重視する場合
産業機械の摩耗部品、高速回転軸の軸受けなどにはC6161(アルミニウム青銅)、C5191(りん青銅)が最適です。表面硬度が高く耐摩耗性に優れているだけでなく、耐焼付き性・潤滑性もよく、摺動特性も安定しているからです。
切削加工性を重視する場合
精密機械部品、自動旋盤加工部品などには切削加工性が必要なので、C3601(快削黄銅)、C3604(快削黄銅)が最適です。寸法精度が出しやすく、切りくずの分断性が良好なだけでなく、工具寿命が長いことも推奨される理由といえます。
建築・配管用途
耐食性を重視する場合
C1220(りん脱酸銅)、C4430(アドミラルティ黄銅)は耐食性が高いため、建築用雨樋、空調設備部品、熱交換機チューブなどの用途に最適です。加工性・溶接性にも優れ、耐候性も備えているのがこの材料の強みです。
装飾性を重視する場合
装飾部品やインテリア部品などには装飾性が欠かせませんので、加工性が良好で外観が美しいC2600(黄銅)、C7521(洋白)が最適です。
品質管理のポイント
材料受入れ時
化学成分の確認
主成分の含有量、不純物元素の有無を管理し、トレーサビリティを確保するため、「蛍光X線分析法」、「発光分光分析」を行ってください。高精度分析が必要な場合はICP分析も追加しましょう。
機械的性質の確認
加工性、耐摩耗性、延性の指標をもとに引張強さ、硬さ、伸びに関する試験を行います。定期的なサンプリング検査、試験成績書の確認を徹底することで高い品質の維持が可能です。
加工時
寸法管理
加工時は厚さ、幅、長さなどが規格に合致しているかどうかを照合しましょう。定期的な測定と記録は当然であり、精確な照合を行うための測定器の校正を忘れてはなりません。統計的品質管理も活用できます。
表面品質
キズ、変色、異物は品質に大きく関わってきます。キズがないか、酸化や腐食はないか、付着物や埋め込みがないかどうかを「目視」や「拡大検査」でしっかり確認してください。
まとめ
銅合金は用途が幅広く、新たな分野での使用も期待される材料です。要求される特性に応じた最適な選択を行って品質を徹底的に管理することで生産が効率的になり、製品の信頼性が高まります。今回お話しした銅合金の特性と品質管理のポイントを参考にしていただければ幸いです。
監修者情報
代表取締役 畑 敬三
株式会社ハタメタルワークスは、産業用電池や車輌機器向けの「銅加工」を専門とし、昭和10年の創業以来「誠実な対応」と「確かな製品」で信頼を築いてきました。迅速な対応により最短翌日納品が可能で、小ロットにも対応します。「小さな一流企業」を目指し、「銅加工ならハタメタルワークス」と評価されるまで成長。今後も独自の価値を提供し続けます。
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